2012年10月5日 無料相談
カウンセリングルーム奥のドアから『G矯正歯科』院長の薄沢氏が入室してきました。薄沢氏の第一印象は、表情に覇気が無く気難しい神経質そうな雰囲気の中年男性といった感じでした。
薄沢氏は椅子に座りながら特に挨拶をすることもなく、開口一番に愚痴を言い始めました。
薄沢「参ったよ、さっきまで診察してた患者が、『仕上がった歯並びが気に入らないって』馬鹿なこと言い出して・・・」
薄沢氏はそう言いながら真っ白な歯で微笑む欧米人女性が写った雑誌の切り抜きのような写真を私に見せながら話しを続けました。
薄沢「歯並びが真っ直ぐになってないって。こっちはせっかくこういったアーチ型の綺麗な歯並びにしてあげたのに。気に入らない、やり直せとか言って騒ぎだして」
突然はじまった薄沢氏の愚痴に驚きながらも、私は「はぁー」とか「へぇー」など適当な相槌を打ちながら愚痴に耳を傾けました。
薄沢「アメリカではこの写真みたいにアーチ型の歯並びに仕上げるのが当たり前なんだよね。でも日本のヘタクソな歯科医は入れ歯みたいに真っ直ぐにしちゃう。うちは最先端のアメリカ式だから。変でしょ、真っすぐは」
私「そ、そうですね、私もこっちのアーチ型の方がいいです・・・」
薄沢「そうなんだよね~、何にも分かってないんだよ、あの患者」
愚痴が終わる気配がなかったので、私は話題を変えるために先ほどの動画で紹介されていた薄沢氏の経歴について話しを振ってみました。
私「先生はニューヨーク大学の歯学部を卒業されているんですよね。すごいですね」
薄沢「ん?あぁ、あれね。まぁ・・・」
不思議なことに薄沢氏はニューヨーク大学の話題になると何だかバツが悪そうな顔をして言葉を濁しました。
後で分かったことですが、ホームページや動画で紹介されていた薄沢院長の『ニューヨーク大学 歯学部卒業』という経歴は、正式には『ニューヨーク大学インプラントCDEプログラム終了』のことでした。これはニューヨーク大学歯学部の正規留学でなく、お金を支払えば誰でも参加し卒業することができる1週間程の短期留学のことです。薄沢氏はこの短期留学に参加したことをまるでニューヨーク大学に留学し卒業したかのようにホームページやパンフレット、動画などで喧伝していました。これは患者を欺く学歴詐称に近い行為だと私は思います。(※ニューヨーク大学インプラントCDEプログラムを批判しているわけではありません)
私「それで私のことなんですが、長年、顎の痛みと、肩こり、腰痛があって・・・噛み締めが強いことと関係ありますか?」
薄沢「まぁ~、噛み締めが強いと顎関節症なったりするからね」
私「こちらではカイロプラクティックと歯列矯正で顎関節症治療を行っていると」
薄沢「そうだけど、あなたが顎関節症なのかは検査してみないと分からない」」
私「それとメールでもお伝えしたんですけど、前歯2本にラミネートべニアが貼ってあるんですけど、矯正装置つけれますか?」
薄沢「それは特殊な接着剤があるから大丈夫」
私「よかった。あと、治療期間のことなんですが、仕事の都合で1年から1年半くらいで終了するような治療を希望しているんですけど。たしかスピード矯正とか・・・」
薄沢「あぁ、スピード矯正ね。うちでやってるスピード矯正はアンカーインプラントとコルチコトミーで歯を速く動かす方法なんだよね」
私「コルチコトミー?」
薄沢「歯茎の骨に傷を入れる手術。骨にひびが入ると代謝が良くなって歯が動きやすくなる。後戻りも軽減される。骨折した後の骨って前より丈夫になるって聞いたことあるでしょ?それと同じ理屈」
私「へぇー、そうなんですね。すごい手術があるんですね」
薄沢「まぁ、日本でコルチコトミーできる歯科医は限られてるからね。特別な知識と技術が必要だから。アメリカでは一般的な手術だけど日本でできるところは少ないよ」
薄沢氏は顎関節症治療の提案など自ら積極的に話しをすることはなく、私が聞いたことに対してだけ淡々と答えるといった感じでした。私が色々と『G矯正歯科』が行っている顎関節症治療や歯列矯正について質問しても薄沢氏は時計をチラチラと見ながらどこか落ち着かないイライラした様子で、終いには「それは検査しないと分からない」を繰り返すばかりになってしまいました。検査をするにしても費用が31,500円とそれなりの金額を支払う必要があるためもう少し詳しく話しを聞きたかったのですが、何となく質問しづらい雰囲気になったのでこの日はとりあえず検討させていただくということで無料相談は終了しました。
カウンセリングルームを出ると受付の女性スタッフから「検査を希望する場合は連絡してください」と告げられ、大量のパンフレットが入った封筒を渡されました。エレベーターが来るのを待っている間待合スペースに目をやると、新たに女性2人が椅子に座りタブレット端末で例の宣伝動画を視聴していました。私はその様子を横目で見ながらエレベーターに乗り『G矯正歯科』を後にしました。
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