2012年9月29日 メールでの問い合わせ
私(太田景子:仮名)は20代の頃から日本と海外を行き来する仕事をしていましたが、日本に長期滞在するタイミングで以前から気になっていた顎関節症の治療を日本で行いたいと考えていました。
日本滞在中に治療を終える必要があったため、1年から1年半くらいで終了する治療を希望していました。そこでインターネットを使って顎関節症治療を行っている病院を探したところ、目に留まったのが『G矯正歯科』でした。
当時の『G矯正歯科』のホームページには、歯列矯正を行えば顎関節症が改善されると書いてありました。また、『見えない矯正・最短6か月で終わるスピード矯正・世界が認めた名医・矯正治療の世界に革命を起こした』などの魅力的な宣伝文句が多数掲載されていました。グーグルなどのネット口コミの評価も高かったので私は『G矯正歯科』に以下の内容をメールで送りました。
- 短期間での治療に興味がある
- 歯の表側に矯正器具を付けることには抵抗がある
- 前歯2本がさし歯でラミネートべニアを貼ってあるが治療可能か
2日後、『G矯正歯科』から届いたメールの内容は以下のとおりです。
「太田様は短期間での矯正をお考えなのですね。前歯2本とラミネートべニアを貼っているとのことですが、ラミネートべニア用の接着剤がございますので矯正は可能です。しかし、市販の接着剤でつかないことや、相性が悪いと外れたりします。その場合にはラミネートべニアや差し歯を一度プラスチックの歯(仮歯)にかえないと出来ません。ご相談にお越しいただければ、いろいろとお話しができるかと思いますので宜しければ一度ご相談にお越し下さい。」
私は早速、無料相談の予約を取ることにしました。
2012年10月5日 初回無料相談
『G矯正歯科』は都内の雑居ビルに入る店舗で、院内は白を基調としたシンプルなつくりでした。受付のすぐ横には一人掛の椅子を4つ並べただけの待合スペースがあり、私が来院したときにはすでに女性が3名横一列に座っていました。3名の女性たちは全員タブレット端末を持って何かの動画を視聴していました。
受付の女性スタッフに無料相談で来たことを告げると、女性スタッフは機械的な口調で、そこの椅子に座って動画を視聴するようにと言いながら例のタブレット端末を手渡してきました。どうやら、初めて来院した人に動画を視聴してもらうことがマニュアル化されているようでした。
動画は『G矯正歯科』の宣伝ビデオでした。『G矯正歯科』で使用する矯正器具は院長が開発したオリジナルの器具で、他の矯正器具と比べて大変優れていることや、最新の医療機器を取り揃えていることが紹介されていました。そして、『G矯正歯科』の院長である『薄沢(仮名)』歯科医が歯科矯正先進国であるアメリカのニューヨーク大学に留学し最先端の技術を身につけていることや、スピード矯正のパイオニアで歯科矯正科界の世界的権威であることが動画内で語られていました。
当時の私は何の疑いもなくその動画の内容を信じてしまい、動画の視聴が終わる頃には私の『G矯正歯科』に対する期待感は一気に高まっていました。
しかし、今にして思えば、繰り返し何度も強調される『G矯正歯科』の魅力と薄沢歯科医を礼賛する内容は、さながら狂信的なカルト集団の洗脳ビデオようにも思えました。
動画の視聴が終わりしばらくすると茶髪の若い女性スタッフから名前を呼ばれ、受付横のカウンセリングルームに入るように言われました。カウンセリングルームは広さ2畳くらいで長方形のテーブルに椅子が2つセットされているほか、壁際に椅子が2つ置いてありました。部屋の奥にはスタッフルームと繋がっていると思われるドアが一つあり、壁の棚には歯型の模型などが置いてありました。
部屋には女性スタッフが2名いました。茶髪の若い女性は田辺(仮名)と名乗り『トリートメントコーディネーター』であることを告げてきました。田辺さんの風貌は茶髪縦ロールで長いつけまつげを付けた、いわゆるギャル風の女性でした。もう一人は黒のショートヘアーの地味な雰囲気の若い女性で特に自己紹介は無く壁際に黙って立っていました。
着席すると早速ギャルスタッフの田辺さんが『G矯正歯科』が行っている治療内容の説明を始めました。しかしその内容は先ほど視聴した動画の内容とほとんど一緒で、決められた文言をロボットのようにただひたすら淡々としゃべっている感じでした。
田辺さんの『G矯正歯科宣伝演説』が一通り終わったところで私に関する質問が始まりました。
まず治療目的についての話しになりました。子供の頃から顎関節部分が「カクカク」して大きく口を開けることが難しく、その影響か分からないが、慢性的な肩こりや腰痛に悩まされていることを伝えました。『G矯正歯科』のホームページ(当時)には顎関節症の治療として、歯列矯正と院長自ら施術するカイロプラクティックの併用治療で肩こりや腰痛が改善するプランが紹介されていました。また、最短6か月で治療が終了する『スピード矯正』という用語も大きく宣伝されていたので短期間での治療に興味があることも伝えました。
「過去にマウスピースを使った腰痛治療を行ったのですが効果はありませんでした。インターネットなどで歯列矯正をすれば腰痛や肩こりが改善されるという情報を見たのですが、実際どうなんでしょうか?」と田辺さんに質問したのですが「それは検査(有料)してみないと分からない」と繰り返すばかりで、とにかく検査をするように勧めてきました。それよりも、田辺さんは私の仕事の内容や生活スタイルについて聞きたいようでした。私が長年海外で仕事をしていて、今回一時帰国をきっかけに治療を検討している話しになると急に田辺さんの目の色が変わり、どこの国で生活しているのかや仕事の内容について根掘り葉掘り質問をしてきました。後の証拠保全手続きで入手した診療記録で分かったことですが、『G矯正歯科』のトリートメントコーディネーターの役割は新規顧客の態度、話し方、性格、歯科知識、暮らしぶり、資産状況などの確認をする係でした。『G矯正歯科』ではこの情報を基に患者からお金を騙し取る手口を考えているのだと思います。例えば、性格がおとなしく協力的で所得の高い患者には最初から高額なプランを勧めたり、平均的な所得の患者には一般的な料金のプランで治療をスタートさせてから、のらりくらりと治療を長引かせ毎回の診察代やレントゲン代を毟り取る。患者から「いつになったら終わるのか?」といったクレームがきたら「あなたの歯は動きが悪いから他の治療法を試してみてはどうか」といって必要の無い治療を追加しそこでまた利益を得る。それでも治療が終わらず痺れを切らした患者が院長と話しがしたいと言うと「院長とお話しがしたい場合は院長コンサルテーションの予約を取ってください。予約は1か月先まで埋まっています。ちなみに30分1万円です。」と言ってくる。根負けした患者は仕方なくそのまま治療を続けるか転院するしかありません。しかし、転院しても最初に支払った料金が返金されることはありません。
連絡がとれなくなった患者(転院した患者)がどのくらい居たかを表す内部資料も入手していますので今後の記事内でご紹介したいと考えています。また、私の院長コンサルテーションでの出来事については今後詳しくお伝えします。(かなりの修羅場になりました。)
一通りの話しが終わり田辺さんが「それでは院長先生をお呼びします」と言って奥のドアから出ていくと、後ろで座っていた黒髪の女性スタッフが話しかけてきました。その時に気が付いたのですが、黒髪の女性スタッフは私と田辺さんの会話を筆記で記録していたようです。何のためにそんなことをしているのかはその時は分かりませんでしたが・・・。
黒髪の女性は私が海外で仕事をしていることに興味があるようで海外での暮らしについて他愛のない話しをしてきました。しかし、この黒髪の女性スタッフを見たのはこの日だけで、通院期間中に院内で見かけることは二度とありませんでした。
しばらくすると奥のドアが開きを白衣を着た男性がブツブツと独り言を言いながら入ってきました。
この人物が『G矯正歯科』院長の薄沢歯科医でした。
つづく
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